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カバさんとキリンさん

 

 カバさんとキリンさんは、動物園のお隣りさんどうしで、大の仲良しです。

 いつも水の中にいるカバさんは、いつも外の景色を話してくれるキリンさんが大好き。

 すらっと背の高いキリンさんは、きれい好きでおっとりしたカバさんが大好き。

 二人でおしゃべりする時には、キリンさんが仕切の柵のところから長い首を折り曲げてカバさんのそばまで顔をよせてきます。

 そして、カバさんの池の水をお茶がわりにして、いろんなおしゃべりをするのです。

 カバさんは、大好きなキリンさんが水を飲む場所を大事にしていて、きれいに自分でおそうじをします。飼育係の人よりもじょうずなくらいです。

 ところが、最近それがうまくいきません。

 カラスくんが動物園にやってきたからです。

 カラスくんは、カバさんがおそうじするそばから、わざと水浴びしてよごしていきます。

 カバさんがいくら怒ったって、飛び上がってしまえばとどかないから、平気で何度もやってきます。

 背の高いキリンさんよりももっと高いところまで飛べるから、キリンさんが怒ったって知らんぷりです。

 カラスくんは、カバさんやキリンさんだけでなく、他の動物さん達のところへも飛んで行ってはわるさをしていきます。

 飼育係の人もみんな、なかなかつかまらないカラスくんにほとほと手をやいています。

 ある雨の日、今日はカラスくんも飛んでこないだろうと安心していたカバさんは、エサバコを見てびっくりぎょうてん。

 エサバコの中にびしょぬれのカラスくんがもぐっていたからです。

 また何かわるさしにきたのかと思って、カバさんがじっとしてると、カラスくんはぽろぽろ涙をこぼして泣きだしました。

「寒いよう、寂しいよう、お腹すいたよう」

 カバさんは、もっとびっくりぎょうてん。

 カバさんは、もっとびっくりぎょうてん。

 カラスくんは、カバさんやキリンさんや他の動物さん達にかまってほしくて、わざとさるさしていたのです。

「お友達がほしいよう」

「なあんだ、そうだったの」

 カバさんはほっとして、わるさしないならお友達になりましょうと言いました。

 カラスくんは何度もうなずいて、もうわるさしませんと言いました。

 

 

 カバさんはカラスくんにエサを分けてあげて、その夜カラスくんはカバさんのエサバコの中でぐっすり眠りました。

 次の朝、カバさんが、カラスくんとお友達になったことをお話ししようとキリンさんを呼ぶと、キリンさんは、カバさんのエサバコにいるカラスくんを見て怒ってしまいました。

「なんでカラスくんがここにいるの?」

「あのね、カラスくんはもうわるさしないって言ってるの。だからお友達になったの」

「カラスくんと仲良くするカバさんなんて、きらいだ」

 カバさんが、カラスくんはお友達がほしくてわるさしてたんだって言う前に、キリンさんはぷいっと首をひっこめてしまいました。

 何度読んでも全然こっちに来てくれません。

「ごめんね、カバさん、ごめんね」

 カラスくんは、自分のせいでカバさんが嫌われてしまったので、おろおろしました。

 カバさんはすっかり悲しくなって池の中に潜ってしまいました。

 池の底で、カバさんはわんわん泣きました。

 大好きなキリンさんに嫌われたのが悲しくて池の水がしょっぱくなるくらに泣きました。

 ふと、上の方で水音がしたので、カバさんが泣きはらした目で見上げると、カラスくんが水浴びしているのが見えました。

「わるさしないって言ったのに!」

 カバさんは怒って、池の中からザバッと飛び出しました。

「やったあ!カバさん出てきてくれた!」

「キリンさん…」

 池の上には、キリンさんがいつものように首を折り曲げてカバさんを見ていました。

 そのキリンさんの頭の上にカラスくんがとまっています。

「キリンさん、何度もカバさんのこと呼んだんだよ。でもカバさん全然きこえないみたいだから、わざと水浴びしたの。そうすれば、絶対出てくると思った」

「ごめんね、カバさん」

 キリンさんがおずおずと言いました。

 カラスくんは、キリンさんに、カバさんがお友達になってくれたわけをいっしょうけんめい説明したのです。

 カバさんはとっても嬉しくなりました。

 カラスくんは、他の動物さん達と仲直りしに飛んで行きました。

 カバさんとキリンさんは、二人でちょっぴりしょっぱくなった池の水をお茶がわりに、またいつものおしゃべりを始めました。

​                     おしまい

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